点検

貿易戦争が始まっていますが、米国経済はまだ今のところ堅調さを保っています。住宅指数や自動車販売台数などには若干不安を感じるものが見られ始めているものの、景気減速が間近とまで言いきれるものではまだありません。このためFRBは利上げを続ける姿勢を示しており、9月に続いてもう一回の利上げが年内に予想されています(0.25%引き上げて、2.25%~2.50%となる見込み)。


先進国の中で、米国が一番高金利

米国の利上げは、他の先進国と比べてもかなり順調に行われています。このため、G7にオートラリアとニュージーランドを加えた9か国の中で、米国の政策金利が最も高いという状況に現在なっています。これは2000年以降初めてのことです。一般的に、先進国の中で「高金利通貨」というと豪ドルやNZドルを思い浮かべることが多いと思います。しかし今や、米ドルが高金利通貨なのです。

為替の強さも米国が一番

では、先進国に投資するなら、今は米国がベストなのでしょうか? もし米ドルをもともと持っていて、それを預金やMMFなどといったリスクを抑えたものでの運用を考えているなら、それが正解でしょう。ただ、原資が円や、或いはその他のドル以外の通貨なら、為替の水準にも注意する必要があります。そして実は、米ドルは既にかなり高くなってしまっているのです。

国際決済銀行(BIS)が算出しているドルの総合的な価値を示す名目実効レートで見ると、昨年末からは6.2%上昇しています。ユーロや円の名目実効レートも同時期に上昇はしていますが、その率は5%に届きません。米国の高金利に魅せられ、海外からの投資資金が既に多く米国に流入しているのです。非常に好調な米国の株式市場も、この動きに拍車をかけました。また、アルゼンチンやトルコ、ブラジルなどでの政策の失敗という自殺点も加わり、新興国からの資金流出もさらに米ドルを一層押し上げる展開となっています。

つまり、今から米国に投資すると、少なくとも去年よりはドル高の水準から、つまり為替の面からは不利な水準から、投資を始めることになってしまいます。もちろんドルが更に上昇する可能性もありますが、上記の点を踏まえた上で判断することが必要となります。


為替ヘッジ付き投信を持っている場合は点検のタイミング

むしろここからは、日米の短期金利の格差が広がったことで、対ドルでの円の為替ヘッジコストが上昇したことに目を向ける必要があると思います。為替のヘッジコストは、両通貨間の短期金利の格差を基本に決まります。米国では2015年末から計8回の利上げによって政策金利が2.0~2.25%まで上昇した一方、日本はマイナス金利を継続しています。これだけでも2%以上のヘッジコストが生じる計算となります。しかし実際のヘッジコストは需給要因にも左右され、足元では3%近くにまで拡大しているのです。需給要因は変化するので、その部分でかさ上げされたヘッジコストはまた低下するかもしれません。しかし、米国の利上げはまだ続く見込みです。現時点では、少なくとも2019年にかけて数回の利上げが予想されています。日本も来年中に利上げに踏み切らない限り、ヘッジコストは今後も拡大していく可能性が高いと言えます。

為替リスクを敬遠して、投資信託の為替ヘッジ付きコースを選択して保有している人も多いでしょう。そうした人はここで一度、保有する投信の運用内容を再確認してみるのが良いかもしれません。特に、米ドル建ての債券やバンクローンなどで運用するタイプの投信であれば、直近の月次レポートなどで、保有証券の平均利回りなどを確認してみましょう。その平均利回りからヘッジコスト(今なら約3%)を引き、さらに運用管理費用(信託報酬)を差し引いたものが、手元に残ると期待できる分です。これが納得できない水準なら、保有を続けるかどうか検討したほうが良いと言えます。


基本的には投信を余り頻繁に売買するのはお勧めできません。しかし、市場環境が大きく変わったタイミングでは、やはり点検とファインチューニングは重要だと思います。

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