ドル建ての金価格が1300ドルを超えてきました。
ここ5年程のレンジはまだ上抜けてはいませんが、一層の上昇に向けた環境が整いつつある気配も感じられます。
背景の一つとしては、これまで金価格の上値を抑えてきた米国の利上げが一段落しそうであることがあります。マーケットはむしろ、今年年末に向けて利下げをも織り込むような動きさえ見せています。
そしてもう一つは、安全資産を求めるムードの高まりです。中でも、金を再度買い始めた一部の中央銀行の動きはそれを象徴しているかのようです。
これに関して、2018年12月11日に執筆した私の拙文がファイナンシャルフィールドに掲載されております。ご興味ありましたら、ご一読いただければと思います。
その記事内では、従来から金の主要購入国であったロシアやトルコが購入額を更に増やしているほか、長らく金を購入してこなかったポーランドやハンガリー、インドなども新たに購入を再開したことを指摘しました。その執筆時点では、金の購入事実をタイムリーには公表しない中国については推測による言及を避けました。しかし中国は2015年7月にも、金の保有量が突如前年比57%増となったと、6年ぶりに発表したことがありました。そして実際今年に入り、中国が昨年末時点で金の保有額をまた増やしていたことが明らかになりました。中国の外貨準備額全体は減少しているため、外貨準備に占める金の比率も上昇したことになります。
12月11日の記事でも書きましたが、一部の中央銀行が金の購入に動く背景には、米ドル以外の資産を増やしたい考えがあると見られます。ロシアやトルコなどは、さらに積極的に米ドルとの距離を開けたい意向が明確に見え、保有する米ドル債も急減させています。
従来の世界秩序を揺るがしてまでも自国優先を貫こうとする米国の政策が、一方では、米ドルの「安全資産」とみなされてきた有利な立場を揺さぶっている構図です。ただ残念ながら、基軸通貨でもある米ドルに代わる他の通貨はまだ存在しません。このため、米ドルから流れ出した安全を求める資産が、金へと流れ込んでいるようです。
翻って、個人の運用においては、金への投資については否定的な意見も多く聞かれます。金は金利を生まないどころか、何らかの保有コストがかかることが多いためです。しかし、運用対象ではなく、資産の保険手段として金を考えれば、やはり全く無駄だと切り捨てることも難しいかもしれません。世界の万が一に備える保険としては、金はこれまでもある程度の力を発揮してきたためです。
余裕資産があるなら、その一部で金を保有することも有効であろうと個人的には感じています。
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