以前に、外国債券(外債)の概要について、外貨預金と比較しながら書いたことがあります。
そして先月にも、多少加筆をしつつ、ファイナンシャルフィールドで基本的な外債の仕組みについて書きました(「①外貨運用を始める~外国債券とはどういうものか?」「②実際に外債に投資する上での注意点は?」)。
外債に馴染みのない方にもその特長をお伝えしたいとの考えからですが、気づけば、2018年1月と比べて先月はむしろ外債の注意点を指摘するトーンも強まったようです。
理由としては、最も代表的な外債である「米国債」の市場環境が大きく変化していたことがあります。
それは主に、イールドカーブの形状です。
イールドカーブとは、「利回り曲線」と訳されます。
債券の利回りというのは、年限に応じてその水準が異なります。
横軸に期間を取り、縦軸に利回りを取って引いた曲線が、イールドカーブです。
本来であれば、期間が長くなるほど様々な不透明要素が増えるため、その埋め合わせとして利回りが高くなります。カーブは右肩上がりの形状となり、将来のインフレ上昇や財政悪化といった債券に悪い材料が多い時には、右肩上がりの勾配がさらに強まりがちです。
しかし、米国債のイールドカーブは現在、ほぼフラット(まっ平)な形状となっているのです。
昨年1月時点では、6か月の米国債の利回りが1.85%であるのに対し、10年国債の利回りは2.84%でした(その差、0.99%)。一方、5月21日現在の6か月米国債利回りは2.4%であるのに対し、10年国債の利回りは2.41%であり、その差はほとんど無いのです。これでは、敢えて期間のリスクをとって10年債を購入する意味がありません。6か月と10年の間の年限の米国債も、現在全て6か月物より低い利回りとなっています。今後、すべての年限の債券利回りが今より下がり、更にそれが長期的に続くと予想するなら、現時点でも10年債を購入してその利回りを確保しておくという考え方もできるのかもしれません。しかし絶対水準を考えると、それも余り魅力的な戦略とは思えません。
ただし、上で書いた利回りは、プロの機関投資家の間で取引がされる際のものです。日本の一般の個人投資家はそのレベルで取引はできないため、実際に取引可能な利回りで比較する必要があります。一例として、某メガバンク系証券会社のHPでは以下のような水準で米国債が紹介されていました。
2020年4月償還米国債(約11か月物) 利回り 2.15%
2024年5月償還米国債(約5年物) 利回り 2.03%
2029年2月償還米国債(約10年物) 利回り 2.26%
一方、米ドル建てMMFの多くは、利回りは現在1.8~1.9%程度です。
金融機関によってそれぞれの米国債の販売利回りは異なりますが、債券、特に償還までの期間の長い長期債の魅力が、短期債よりも低下しているのは上記例でもやはり見て取れると思います。
メガバンクなどの外貨預金の金利は、1年物などでも高くて0.6%程度となっています。銀行の高コスト体質の裏返しで、利回りの比較では外債をまだ魅力的に見せてくれます。
しかし、イールドカーブが逆イールド(右肩下がりの形状)になりかかっている現在、外債を選ぶにしても、最適な年限を注意深く見定める必要があります。
さらに、敢えて当面は外貨MMFで運用し、次のタイミングを待つという選択もありだと思います。
また、少しでも高い利回りを得るために、よく分からない名前の発行体や仕組みを持つ債券を検討する場合にも、違うタイミングならそのリスクを取る必要がない可能性にも考えてを巡らせてみたいところです。
上記は米ドル建ての債券についてですが、通貨ごとにイールドカーブの形状は異なります。最も魅力的な利回りと、自身の資金計画の両方から見て、最適な年限を選ぶことが債券運用では重要となります。
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