ねこ けんか

ワシントンでは現在、米中の貿易協議が行われています。トランプ大統領は初日の協議について、「とてもうまくいった」と語り、本日のマーケットには協議の進展について楽観的なムードが漂っています。

しかし、今回の話し合いでお互いの関税率が多少引き下げられたり、或いは対象品目が減らされたとしても、米中の覇権争いが今後も続くことは確実です。そしてその戦線はどんどん伸びており、最近では資本市場にも大打撃を与えかねないニュースがありました。米メディアのブルームバーグが報じたもので、ホワイトハウスが米国の証券取引所に上場している中国企業の上場廃止を検討しているというものです。また、米国の公的年金が中国企業の株を購入することも制限したい考えだと報じました。米国財務省やナバロ大統領補佐官などは、その報道の一部についてすぐに否定するコメントを発表しましたが、火消しを急いだのは、それだけこの報道のリパーカッションを懸念したためともみられます。



これについて、ファイナンシャル・フィールドに詳細な記事を書いております(「先鋭化する米中対立は、資本市場に破滅的混乱も」。宜しければ、こちらをご覧ください。


米国にとって恐れるべきシナリオは、中国が米国債の売却という反撃に出ることです。
これまでは、中国がその戦略をとることは無いと見られていました。米国債市場以外に、多額の外貨準備を置いておける流動性の高い市場は無いためです。また、多額の売却によって米国債市場が大きく値崩れすれば、中国自身にとってもコストは大きく跳ね返ります。しかしもし米国が、中国企業への資金流入を本気で阻止しようとするなら、中国が今後も米国債を保有し続けると 言い切ることはできないでしょう。

さらに、米国債市場には特に今、要らぬ波風を立てたくない理由があります。
大統領選挙を前に、与野党ともに歳出拡大に甘くなっており、財政赤字が2020年度にも1兆ドルを超えると見られているのです。それに伴って米国債の発行額も増えており、最近では応札倍率が低い新発債の入札結果も増えてきました。米国は今、米国債の売り手ではなく、買い手を非常に必要としているのです。そして9月半ばには、短期金利の一つであるレポレートが10%を超え、連邦準備理事会(FRB)が10年ぶりに資金供給をするという異常事態も起きました。この金利急騰の理由はいろいろと取りざたされていますが、米国債の発行額が大きくなりすぎていることも一因と見られます。FRBは現在も資金供給を続けていますが、今月末のFOMCでは米国債の購入再開も決定すると予想されています。


米国の一部議員が中国企業の上場廃止を主張するのは、中国企業が本来受けるべき米国当局の監査を受けていないことも背景にあります。そうした主張にも一理あると見えますが、資本市場でも米中は既に密接につながっています。安易に中国を締め出そうとすれば、米国の金利全般が大きく上昇するような事態も招きかねません。現在の株高は低金利によって正当化されている部分が大きく、金利上昇は株式市場にも大幅な水準調整を迫るでしょう。ハイイールド債市場からREITまで、全てのアセットクラスがグローバルに棄損すると見られます。ホワイトハウスにはこうした点についても十分目配りしたうえでの判断が求められます。


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