りんご


昨年来、ドル建て中短期債の金利上昇ペースが速まっています。

米国経済が堅調で、FRBが金融引締め路線を続けていることが背景にあります。

しかも昨年末、米国では30年ぶりの大型減税が決まりました。
これによって景気が過熱しかねないとの見方も、金利上昇に一層の拍車をかけていると見られます。


しかし実はそれ以外にも、この大型減税にはドル建て中短期債にとってのネガティブ材料が含まれていました。

それは、レパトリ減税です。


これは、米国企業が海外であげた利益を米国に還流する際の課税を、一度に限り、現金・流動資産については15.5%、固定資産については8%に減税するというもの。


これを受けて、早速アップルが米国外に滞留させていた資金を米国に戻すと発表しました。

アップルは実に2500億ドルもの資産を海外に保有していますが、今回の発表では、資金還流に伴う税コストを約380億ドルと見込んでいると述べています。

つまりは、ほぼ全額を還流させるということでしょうか。

トランプ大統領はこの発表に非常にご満悦でしたが、実は債券市場、中でも社債市場にとっては余り嬉しくないニュースといえるのです。


と言うのも、アップルは海外の資金を現金で持っているわけではありません。

半分以上の1530億ドルを社債で、また600億ドルを米国債の形で保有しています(昨年9月末時点)。この社債の保有額だけで、世界最大の債券ファンドである「バンガード・トータル・リターン・インデックス・ファンド」の資産額にほぼ匹敵する大きさなのです。


さすがにアップルも、ポートフォリオ全部を一気に売りに出してマーケットを潰すようなことはしないと思います。

しかし、売却ペースがゆっくりだったとしても(或いは売却せず償還まで待ったとしても)、今後これほどの大口投資家がいなくなるということ自体、社債市場にとっては少なからぬ打撃です。


更に言えば、米国外で社債を大量に保有している米国企業はアップルだけではありません。海外で利益を上げている多くの大企業が、アップルほどではないにせよ、同様に社債を保有しています。

古い記事で恐縮ですが、昨年9月16日付のFT記事によると、その額は上位30社で8400億ドルに上ると言います。

https://www.ft.com/content/27ab1da0-99f6-11e7-b83c-9588e51488a0

そうした企業らも、アップル同様、米国内に資金還流をする選択をする可能性は小さくありません。

特に現在の金利上昇局面では、巨額の社債ポートフォリオを抱え続けること自体、企業にとっては大きな財務リスクとなります。資金還流に関係なく、ポートフォリオの縮小を検討することもあり得るでしょう。

これら企業の多くは比較的短い債券を選好しているとされ、影響は中短期債中心にみられそうです。

 

折しも、社債の償還予定額は、昨年よりも今年、今年よりも来年の方が多いことが見込まれています。

それらの社債の借換は供給増につながり、需給バランスを悪化させます。

米国の利上げペースが想定以上に速まりそうなら、本格的な金利上昇前に駆け込みの社債発行が急増することもあり得ます。

何より、米国自体も大型減税による財政悪化で、国債の発行が増えることが懸念されます。

 

もちろん、債券市場には様々な要因が影響を与えます。

上記の要因だけで、相場の激変を予想するのは行き過ぎかもしれません。
世界的に年金などの運用資金が増大していることは、引き続き強力なサポート要因だと考えています。

ただし、長らく債券市場、特に社債市場には良い時代が続いてきただけに、2018年は色々と目配りしておきたいと思うところなのです。

 

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