国内で販売されている投信の中にも、「ハイイールド債」で運用しているものが最近多く見受けられます。
ハイイールド債というのは、一般的に「高利回り債」と訳されます。
なぜ高利回りなのかというと、債券の発行体の信用力が低かったり、通常よりも投資家にとって不利な構造となっているなど、リスクが高い債券だからです。
ですから、より正確には、「ハイリスク・ハイイールド債」と呼ぶべきだと思いますが、世界でもこうした債券は
単に"High Yield Bond" と称されています。
名前はともかく、こうしたハイイールド債に関連する投信に投資をするなら、大まかな状況は確認しておきたいところです。
ハイイールド債を評価するにあたっては、その絶対利回り水準と同年限の国債との利回り格差(スプレッド)を見るのが一般的です(同年限の国債とは、例えば10年の米ドル建てハイイールド債なら、米国10年債ということになります)。
ここでは、米ドル建てのハイイールド債について見てみたいと思います。
検討している投信に含まれるハイイールド債を個別に見ていければ理想的ですが、それはまず不可能かと思われますので、よく使われるBofAメリルリンチの指数を例にとってみます。
まずは絶対利回りですが、1月12日発表分では、5.72%となっています(BofA Merrill Lynch US High Yield Effective Yield)。
これは既に、リーマンショック前をも下回る過去最低水準です。
ただリーマンショック以降、米国では大幅な金融緩和が行われ、国債利回りもそれ以前よりは大きく低下しました。全体的な金利水準自体が変わっているのだから、ハイイールド債の利回りが低下しているのも当然であるとの議論はできます。
次にスプレッドですが、こちらも同社の同日の指数でみると、340bp(=
3.4%)と過去10年間見られなかったような水準まで縮小しています(BofA
Merrill Lynch US High Yield Option-Adjusted Spread)。
つまり、リスクをとっても、以前ほど利回りの上乗せが望めなくなっているということです。もっと有り体にいえば、以前よりも割高になっているということです。
ただこちらも、現在は世界経済が非常に良好なので、信用力の低い企業であってもデフォルト(倒産)する可能性は低く、リスクは見た目より小さいはずだという意見もあるかもしれません。或いは、むしろ信用力は今後向上するだろうとの見方を反映しているとの見方もできます。
世界経済は引き続き順調に推移する一方、欧米の金利上昇はあっても緩やか、という見方が現在一般的です。その見立てなら、ハイイールド債はまだ妙味があると考えることもできるでしょう。
実際、今年前半についてはまだハイイールド債市場の活況は続くと予想している証券会社のほうが多い印象です。
ただ、正直言って、個人的には警戒感を持っています。
ハイイールド債が現在高値圏にあることを否定できる人は少ないと思います。
また今後欧米中央銀行が利上げを進めた場合、信用力の低い企業が順調に借り換えを進めていけるのか疑問もあります(多くのハイイールド債は、償還の手前で借り換えを行って償還金に充てています)。
しかしこれについては、ハイイールド債の償還(=借り換え)の金額は、今年はまださほど多くないとの反論も受けるかもしれません。
結局のところ、ハイイールド債が買い時かどうかは、世界経済の先行きをどう見るかによって異なってくるのです(他の金融商品と同じです)。
ただ私の見方はともかく、リーマンショックの直前の高値圏でハイイールド債を購入してしまったときでも、そのまま2、3年以上持ち続けた場合にはトータルリターンはプラスになっていたことは付け加えて起きます。
長く運用できる資金なら、ハイイールド債は魅力的な資産クラスの一つであることは私も賛同するところです。