犯人


世界の株式市場が5日、激しく下落しました。米国ダウの下げ幅はリーマンショック以来最大となり、日経平均も一時1600円超下げるなど、世界に激震が走りました。

しかしファンダメンタルで見ると、世界の経済は未だ堅調であり、それを受けて企業業績も伸びています。このため市場では、まだもう少し余震はありそうなものの、この下げた局面は買い場であるとの見方が多いようです。実際、私も押し目買いをしたいと思っている派です。

ただ、その余震がかなり大きなものになるのではないかと危惧させる材料もあります。

それは、「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数です。


今回の下げは余りにも急だったので、市場では様々な犯人捜しが行われています。

コンピューターが行うアルゴリズムやクオンツ、或いはトレンドに乗っかるCTA(ヘッジファンドの一種)などの動きが下げを加速させたという見方には、一定の真実がありそうです。

ただ、もっと疑わしい容疑者がいます。
VIXを投資対象とする商品に由来した、株売りです。

 

VIXというのは、シカゴ・オプション取引所が算出する、S&P500指数の値動きの大きさを示す指標です。VIXの数値が大きいほど、S&P500指数の値動きが大きいことを示します。

ここ数年、大規模な金融緩和の効果もあり、株価の動きは比較的穏やかでした。

このためVIXの値もどんどん低下し、マーケットの注目を集めるようになりました。
それに伴い、10年前にはおよそ無かったようなVIX関連商品が急激に増え、特に最近ではVIXの更なる低下にベットする(賭ける)商品の人気が目立っていました。

そんな中、今週、VIXは一時3倍にまで数値が跳ね上がったのです。

VIX低下にかける商品は当然暴落し、クレディ・スイスはそうした商品の一つであるETN(上場投資証券)の精算を決定しました。このETNの5日の日中高値は118ドルでしたが、時間外取引では15ドル付近まで急落したといいます。また、ノムラ・ヨーロッパ・ファイナンスも、同様のETNの早期償還を発表しました。他にもVIXショート(売り)関連のETP(上場取引型金融商品)十数本が、ボラティリティー急上昇で価値を失い取引が停止されています。

これらの混乱が株安を一層加速させたと言われているのです。

相対(取引所を通さない)も含めたVIX関連商品の規模は正確には分からないようですが、80億ドルから2兆ドルまで、いくつかの専門家の意見がインターネット上では見かけられました。

 

フランスの銀行によるファンドの精算と聞いて、サブプライム問題を一気に表面化させたBNPパリバによるファンド解約凍結、いわゆる「パリバショック」を思い出しました。

パリバショック直後は、問題はサブプライムローンに限った、比較的小さい話と受け止められました。

しかしそれが様々な証券化商品に飛び火し、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)にも火が付くと、もう誰にも止められず "Great Recession"(グレート・リセッション)へと転がり込んでいったのです

今回もそうなると思うわけではありませんが、サブプライムローンがそうであったように、VIX関連商品が実は氷山の一角ではないかという点には危惧しています。

 

実は、近年世界的に、リスク調整型投信というものが人気を集めています。市場のボラティリティをリスクとみなし、ボラティリティが上がってくればポートフォリオ内の株式の配分を落として、「リスク調整」するタイプのものです。

VIXに直接投資するのではありませんが、こうしたタイプの投信もVIXが上昇すれば株の売却を迫られます。

投信だけではなく、こうしたリスク調整型戦略やターゲット・ボラティリティ戦略(一定のボラティリティを維持するために、株などのリスク商品の持ち高を調整する戦略)、またはリスク・パリティ戦略(ポートフォリオ内の各資産のそれぞれのリスク量を一定に保つよう持ち高を調整する戦略)を採っている機関投資家なども含めると、現在の資本市場ではVIX上昇が与える影響は非常に大きいと考えざるを得ません。

 

少し安心することには、今日は日経も若干持ち直しています。

ただ注目すべきは、やはり今後のVIXの動きではないでしょうか。

株価が今後急反発したとしても、それは変動率の高まり、つまりはVIX上昇につながるので要注意であると思われます。

また今回は市場の混乱がこれ以上広がらなかったとしても、VIXという市場にとっての伏兵がいることは今後も注意しておくべきなのでしょう。
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