EXIT


以前、アップルを始めとする米国の大手IT企業などが、今後ドル建て社債の売り手に回る可能性が高いというを書きました。

しかしどうも、足元では売りにくい状況となってきたようです。

 

世界で3番目に大きいドル建て債券ETFである、iShares iBoxx $ Investment Grade Corporate Bond ETF (”LQD”)から先週(5日~9日)、20億ドルもの資金が流出しました。
同ETFにとって、2002年の運用開始以来で最大の流出額であり、全資産に占めるその割合も5.5%と過去最大です。

資金流出は今週に入っても止まらず、14日水曜日には、単日としては過去最大の9.2億ドルが流出しました。
全資産に対する割合は2.7%となり、前回の金融危機の時以来の大きさです。


このETFは投資適格のドル建て社債に投資するものですが、米国の調査会社であるEPFR社の調査によると、世界の債券ファンド全体で見るとさらに多額の資金が先週は流出したようです。

141億ドルの流出ということですが、これは1週間当たりの数字としては過去5番目。

このうち、109億ドルという大半がハイイールド債ファンドから、また20億ドルが投資適格債ファンドからの流出だとしています。
(以前のハイイールド債に関する記事はこちら
 

米国を初めとする先進国での金利上昇懸念に加え、月初の株式市場の混乱を受けてリスクオフムードが広がったためと見られます。

 

これらのファンドやETFの中に入っている個別の社債は、上場株式とは違い、ほとんどが相対で取引されています。

売り手が増えると、買い手が見つけにくくなったり、見つかっても明らかに悪いプライスでしか取引できない状況になります。

特に、リーマンショック以後に投資銀行に対する金融規制が厳しくなってからは、銀行もリスクが取れなくなって社債市場の厚みもぐっと小さくなりました。

ただ今のところ、ドル建て社債の値動きやスプレッド(リスクプレミアムを測る材料)を見る限り、こうしたファンドからの資金流出を受けても社債市場はそこまで混乱はしていないようです。

 

とは言え、流出額の大きさはやはり気になります。

実は、英国中央銀行(BOE)が昨年7月に発表したこんな調査があります。

欧州の投資適格社債のファンドから週間辺りで約1.3%(前回の金融危機時の1.3倍)の資金流出が起れば、社債市場が「限界点(”Breaking point”)」 を迎える、というものです。

この限界点とは、ファンドの売りを市場が吸収できなくなり、取引が成立したとしても、ファンダメンタルから完全に乖離したような安値しかつかないような状況を言っているようです。

BOEは、この調査は試験的("pilot")であり、単一の市場の動きだけを考慮した不完全なものであるとも述べています。

しかし、ファンドからの急激な資金流出が市場の「限界点」につながりかねないという指摘は、過去の事例を考えても十分説得力があります。

 

先の話に戻り、米国有数の債券ETFから1週間で5.5%もの資金流出があっても市場がさほど問題なく機能しているのは、米国の社債市場の方が欧州のものよりも大きくて、懐が深いためだとも考えられます。

でもうがって考えると、運用会社が手持ちのキャッシュで資金流出にまだ対応でき、本格的な社債の売りを行っていないのかもしれません。

投資家は社債ETFを即日で売れますが、ファンドマネージャーは中に入っている社債をそれほど簡単には売れない場合も多くあります。

社債市場のクラッシュはまだテイルリスクだと思いますが、先週のような売りが数週間を超えて続かないかどうかは注意して見ておくべきだと思います。


怖がりなので、念の為。

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