寝る猫


ウォーレン・バフェット氏から、自身が会長兼CEOを務めるバークシャー・ハザウェイ社の株主宛に、今年も書簡が届けられました。
「伝説の投資家」とも「オマハの賢人」(地元ネブラスカ州オマハを中心とした生活を送っているため)とも呼ばれて敬愛される同氏は、毎年の株主総会に合わせて書簡を公開しています。
会社の経営状況だけでなく、同氏の経営哲学や経済の見方も記したその書簡は、株主だけではなく、多くの投資家によって常に注目されてきました。
バークシャー・ハザウェイは保険のビジネスもやっていますが、むしろ投資会社として評価の高い会社です。
その投資手法は、長期投資を基本としています。このため、零細企業や先行きの見通しにくい業種は投資対象に選びません。
2016年の書簡では、「まともな企業を素晴らしい価格(割安な価格)で買おうとするよりも、素晴らしい企業をまともな価格で買うほうがずっと良い」とも述べていました。
実際同社が投資してきた企業を見ると、今ではよく知られているような大手企業が多く、それら株式を長らく保有して福利効果を上げてきたことが分かります。

しかし、足元では大型買収は行っていません。
その理由についてバフェット氏は、買収価格が「史上最高値("all-time high")」であるためだと今年の書簡の中で述べました。
非常に安いコストで資金が潤沢に調達できる中、多くのライバルがそうした高値も受けいれて買収を行っている状況を指摘し、そんな時こそ「我々自身はより慎重に行動しなくてはならない」としています。
実際ブルンバーグの調査によると、2013年の中間買収価格はEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)の8.9倍でしたが、2017年にはそれが12倍にまで上昇していたとのこと。

大型投資を見送っている結果、同社の手元資金は昨年34%増加し、過去最高の1160億ドル(約12兆円)にまで増加しました。
同社はこれを現在、米国短期国債で運用しており、その利回りは非常に些細なものとなっています。
同社の成長のためには、この資金を使って有望な大型買収を行ったほうが良いのは当然です。それはバフェット氏も十分承知しており、また米国経済についても前向きな見方をしているのですが、妥当な価格での買収を我慢強く待つ姿勢を今回改めて示しました。


バークシャー・ハザウェイ社の手元資金は12兆円ほどだと書きましたが、実は日本国内の「マネー・リザーブ・ファンド」(MRF)の純資産残高も、現在13兆円近くとなっています(2018年1月末現在)。
MRFとは、個人投資家が積極的に運用に回さない資金を証券会社に置いておく際の受け皿的な商品です。
2017年10月に過去最高の約13兆2000億円をつけたときからは少し減っていますが、昨年秋ごろに利益確定した資金を、現在の株価水準で再投資することにまだ多くの投資家がためらっている様子がうかがえます。
ただその後、今月初めに世界的な株価急落局面があったので、そこで改めて買いに入った投資家も多かったかもしれません。

急落局面で割安感が出たと判断して買うのは良いと思います。
でも、「上がり続けているから自分も買う」や、「NISA(少額投資非課税制度)の枠が余っているから買う」というのは、やはりお勧めできません。
世界景気は今のところ好調であり、多くの日本企業が最高益を更新しています。
しかし、世界の株価はまだ中期的に上昇するという見方がある一方で、欧米での想定以上の金融引締めや新興国の巨大な債務問題を不安視する声も多く聞かれます。現在、相場の先行きはとても視界良好!いうわけではありません。

「貯蓄から運用へ」との国を挙げての掛け声に、つい心も勇みがちです。
でも、今の相場は高いと感じているなら、長期投資においては「今は買わない」というのも運用の一つであるというバフェット氏の教えは傾聴に値するように思います。
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