子猫

このサイトは同居猫と運営しているのですが、突然ですが、世界のマーケット(金融市場)において、猫="CAT" といえば何を思い浮かべるでしょうか?


株においてCATといえば、NY証券取引所に上場しているキャタピラーがすぐに思いつきます。
CATは、同社のティッカー・シンボル(銘柄コード)です。
重機メーカーであるキャタピラーは、1991年からアメリカを代表する企業で構成されるダウ平均株価の銘柄の一つとなっています。
創業初期から業界1位の座を維持しており、足元でも業績は非常に良好です。
直近の2017年10-12月期決算では、売上高は前年同期比35%増の128億9600万ドルとなり、市場予想(117億8400万ドル)を大きく上回りました。
北米と中国での売り上げが特に好調だったと言い、こうした状況は2018年も続くとして更なる受注増を予想しています。

しかし株価の方は、1月25日の決算発表から3月2日までに、13%以上も下落しています。
これは2月初めのVIXショックで世界的に株価が急落した影響も大きいのですが、大きな個別要因もあります。
それは、トランプ政権が3月1日に発表した、鉄鋼とアルミニウムの輸入品に対する関税導入です。
詳細な内容については今週末か来週初めに発表される正式発表を見ないと分かりませんが、基本的には、鉄鋼輸入品に25%、アルミニウム製品に10%の関税を課すことが決まりました。
この発表を受けて、鉄鋼ユーザーであるキャタピラーの株価がまた大きく押し下げられたのです。

今回の関税導入の決定には、米国の貿易相手国のみならず、米国の産業界や政権内部にさえ反対する意見が多くあるようです。
このため、一部例外が設けられるなど、多少影響を緩和するような措置が盛り込まれる可能性もあります。
しかし、今後他国が報復措置に動く可能性も十分にあり、キャタピラーの株価もすぐに回復というわけにはいかないものと思われます。


では、債券でCATというと何でしょうか?

実は、CAT債(キャットボンド)というものがあるのです。
このCATは "Catastrophe"の略で、日本語では「大災害」を意味します。
主に保険会社などが発行する債券で、投資家は同じ格付けの企業が発行する普通社債よりも高い金利が受け取れる一方で、保険会社に代わって自然災害のリスクを一部引き受けることになります。
つまり、そのCAT債が償還するまでの間に大きな自然災害がなければ高めの金利を受け取り、償還時には投資元本も戻ってきます。
一方、自然災害によって一定以上の保険金支払いが発生した場合には、CAT債の元本は毀損することとなり、投資家に大きな損失が発生するのです。

このCAT債は、1994年にドイツのハノーバー保険会社が発行されたのが最初だと言われており、機関投資家や一部の富裕層の間で従来より人気がありました。
投資の主なリスクが自然災害であるだけに、経済状況や政治状況などには余り左右されません。いわゆる伝統資産と呼ばれる株式や普通債券、または不動産を金融商品化したREITなどとも、全く違う値動きが期待できます。
このため、比較的高い金利に加え、リスク分散効果もあるとして、投資家を引き付けてきました。
特に近年では世界的に低金利状態が長引き、多くの投資家が運用に頭を悩ませていた状況です。
目立った自然災害が少ない時期が続き、CAT債で投資家が損失を被る例も多くは見られませんでした。このためCAT債には割高感も生まれつつあったものの、一層多くの投資家が資金を投じていたようです。

しかし、「天災は忘れたころにやってくる」もの。

再保険世界大手のスイス再保険(スイス・リー)によると、2017年の災害による世界の損失額は3060億ドル(約34兆7000億円)に達したそうです。
カリブ海地域を襲った「イルマ」を初めとする一連のハリケーンや、カリフォルニア州での山火事、さらにメキシコでの大地震などが影響しました。
損害額は2016年から63%の増加で、過去10年間の平均をはるかに上回っているといいます。

そして、3月4日付の日経新聞の記事。
これによると、大手企業年金の3割前後が買うほどに人気化していた「保険リンク証券」のファンドの一つが、昨年4~12月にマイナス12%の成績に陥ったのだそうです。
「保険リンク証券」というのは、CAT債のように災害リスクを引き受ける一方で高めの利回りを受け取る種類の金融商品で、CAT債を含みます。
こうした保険リンク商品は、それより前は年3%前後のリターンを出していたと記事は書いています。
一般に保険リンク商品は流動性が低く、ファンドの形でもすぐに解約はできない可能性があります。
まだ支払保険料が確定せず、そのため損失が固まらない案件もありそうで、今後も注意が必要なニュースだと思われます。


このブログを書いている間も、うちの猫はお昼寝の真っ最中で、なんともお気楽な感じです。
でもマーケットの猫(CAT)には、ちょっと今年の春は大変そうな気がしています。
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