行進


投資先進国の米国で、アクティブ・ファンドからインデックス・ファンドへの資金シフトが鮮明です。投資信託の評価会社であるモーニングスターによると、今年2月までの一年間で、米国株のアクティブ・ファンドから2200億ドル超の資金が流出し、逆にパッシブ・ファンドには1980億ドルが流入しました。ブルンバーグの試算では、このペースの資金シフトが続けば、米国の株式ファンドでは来年にもインデックス・ファンドの運用額がアクティブ・ファンドを追い抜く公算が高いと言います。でもインデックス・ファンドは本当には賢い運用法なのでしょうか?




時代はアクティブ・ファンドからインデックス・ファンドへ・・・
 

ファンドには大きく分けて、アクティブ・ファンドとインデックス・ファンドがあります。前者は、運用者であるファンド・マネージャーが、その知識や経験、分析力によって、少しでも高いリターンを目指すものです。一方後者は、市場平均値を表すインデックスに連動するように銘柄を保有し、市場平均並みのリターンを目指します。どちらの運用法が優れているかという議論は昔からありますが、ここ10年ほどはアクティブ・ファンドの方に分が悪いようです。長期的にインデックスを上回る成績を上げているアクティブ・ファンドは少ないという研究結果も多く出ているためです。その大きな要因の一つに、恐らく手数料の高さがあります。インデックス・ファンドでは特に分析や調査などが必要ではないため、手数料を低く抑えることができます。しかしアクティブ・ファンドではそれらのコストをカバーするため手数料が高くなりがちで、その分、手数料控除後のパフォーマンスが悪くなってしまうのです。また、米国の株式市場では金融危機以降右肩上がりの相場が続いていて、インデックス・ファンドでも十分なリターンが得られたことも、アクティブ・ファンド離れを加速させた一因と見られます。

一方日本では、今年から新たに「積立NISA」が始まりました。最長20年間、非課税で積立投資ができる制度ですが、その投資対象は金融庁が承認した投資信託となります。それらの投資信託の約9割がインデックス・ファンドとなっているのも、金融庁が手数料の安さを重視したことによります。こうした動きもあって、日本でもインデックス・ファンドに注目や人気が集まっています。確かに運用において、手数料というコストが低いことは重要です。投資の初心者にとっては分かりやすい点も魅力でしょう。そのメリットは踏まえたうえで、インデックス・ファンドならではの弱点を考えてみました。



市場全体が下がっているときには、絶対損する


インデックス・ファンドは市場平均並みのリターンを目指しているので、これは当然といえます。アクティブ・ファンドなら市場平均がマイナスとなっていても、値上がりしている、或いは値を保っている個別銘柄を選び出し、プラスの成績を生み出せる可能性があります。少なくとも、現金比率を高めて損失を限定するなどの調整を図ることができるでしょう。しかし、インデックス・ファンドには通常それすらできません。また同じ理由から、市場全体が上がっているときに市場平均以上に勝つ可能性もありません。

 

割高な銘柄を更に買いましている可能性も


例えばTOPIXという株価指数は、東証1部に上場する全銘柄の時価総額を指数化したものです。時価総額の大きい大型株の影響を受けやすい特徴があります。TOPIXに含まれるある銘柄が値上がりすると、インデックス・ファンドは新規資金をよりその銘柄に割り当てる必要があります。インデックス・ファンドで運用するということは、値上がりしているものほど多くの資金で買い付け、値下がりしているものほど少ない資金で買うという投資パターンであり、他の買い物では余り見られない行動とも言えます。値上がりしている裏に正当な買い材料があればいいのですが、それを見極める役割をインデックス・ファンドは担っていないことは改めて認識しておくべきだと思います。

 

受け身になりすぎるのは危険


インデックス・ファンドはパッシブ・ファンドとも言われます。パッシブとは「受け身」という意味で、市場平均のリターンが甘受できれば良いというファンドの考え方を指しています。しかし、受け身が「放置」にならないようには注意したいところです。先に述べた通り、インデックス・ファンドは市場全体が下げているときには抵抗力がなく、また市場が根拠なく過熱しても追随してしまう性格を持っています。やはり運用責任は自分自身にあることを肝に銘じ、市場動向や経済状況などの大きな流れには最低限注意を払っておくべきだと思います。




インデックス・ファンドは便利で効率的な投資手法です。アクティブ・ファンドよりも長期で見れば運用成績が良い場合が多いことも先に述べた通りです。ただ、世界的にインデックス・ファンドの人気が高まり、個別の銘柄を吟味しないでマーケットに参加している資金が大きく増えていることには留意すべきだとも思います。

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