フェイスブックでの不正個人情報流用問題をきっかけに、米国では個人情報の取扱いに関して議論が高まっています。また欧州では先駆けて、個人情報の保護の強化を目的とする法整備も進められており、今月25日にはGDPR(欧州一般データ保護規則)が施行されます。こうした流れがGAFA(Google、アップル、FB、アマゾンを指す造語)のビジネスモデルに与える影響は、現状測りきれません。GAFAは米国株式市場の上昇をけん引してきた立役者だっただけに、それらの株価の動きは市場全体に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。
(この記事は、5月15日付のZuu online に掲載されたものの抜粋です。全文はこちらをご覧ください。)
アクティブ・ファドからパッシブ・ファンドへの流れ
アクティブ運用とパッシブ運用ではどちらが優れているのかという議論は古くからありました。アクティブ運用とはファンド・マネージャーが経験と知識を生かして投資対象を選別する手法であるのに対し、パッシブ運用では株式インデックスなどに連動するように銘柄を保有し、市場平均と同様のリターンを狙うというものです。しかし10年ほど前からはパッシブ運用の方に軍配が上がりつつあり、アクティブ・ファンドからパッシブ・ファンドへの資金シフトが鮮明となっています。そしてこのパッシブ・ファンドには、非常に多くの大手テクノロジー企業が現在含まれているのです。
自動的にIT株に偏るパッシブ・ファンド
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによれば、今年4月30日時点でS&P500種株価指数に占めるIT株の比率は24.8%と、昨年末の20.8%から更に増加しています。2位の金融株は14.7%であることを見ても、他のセクターより断然多いことが分かります。またアマゾンは同インデックスの中で「消費者サービス」セクターに分類されていますが、同社をIT企業とみなすなら、実質的なITセクターの比率はより高まることになります。つまり、それほどはIT株に魅力を感じていない個人でも、パッシブ・ファンドで資産運用をしていれば、その資産の少なくとも4分の1はIT株を保有していることになっているのです。
パッシブ・ファンド以外にもいる、知らず知らずのIT株保有者
最近「ESG投資」が急速に広がりを見せています。いわゆる、「環境(Environment)」「社会(Society)」「企業統治(Governance)」といった非財務面の観点も企業分析に取り入れる投資スタイルです。今ではその運用額は2500兆円を超え、世界の投資全体の4分の1を占めるまでになっているとされます。米国でもここ数年、ESG銘柄に投資するETFやファンドが増えていますが、その多くが共通して保有している銘柄の中にGAFAがあるのです。彼らは自然エネルギーの100%の使用を目指すと宣言するなどし、環境に配慮する企業としてESG面でも評価されていたためです。ESG投資を行っているつもりの投資家も、いつの間にかテクノロジー株に左右されやすい資産構成になっている可能性が高いのです。
貿易戦争やイラン問題など波乱の芽はあるものの、米国経済は今も堅調です。個人情報をめぐる規制の問題もGAFAなどは無難に乗り越え、更に成長していく可能性も十分あります。しかし、意識している以上にテクノロジー株に偏ったポジショニングとなっている現在の市場にはやはり注意も必要ではないかと考えます。
(この記事は、5月15日付のZuu online に掲載されたものの抜粋です。全文はこちらをご覧ください。)