イタリア


イタリアの政局に、世界の金融市場が大きく揺さぶられています。
極右の「同盟」と左派色の強い「五つ星運動」という、従来あまり見られない左右の連立政権が誕生し、そのポピュリズム的な政策に懸念が広がっているためです。ベーシックインカムを導入し、さらに減税も行うとする政策は、イタリアの財政状況を更に悪化させることが見込まれます。また同盟は反移民、反EUを唱える政党であり、E懐疑派が欧州担当相についたことなどもあって、既にイタリアのEU離脱を懸念する声なども聴かれ始めています。こうした状況を受け、大手格付け会社ムーディーズが5月25日、イタリアの格付けを引き下げ方向で見直すことを発表しました。

(この記事は、6月15日付のZuu online に掲載されたものの抜粋です。全文はこちらをご覧ください。)

ムーディーズがイタリア国債の格付け見直しを発表

現在のムーディーズによるイタリアの格付けはBaa2であり、投資不適格級、いわゆる「ジャンク」級となる境界を2段階上回る水準にあります。2段階の格下げは例が無い訳ではなく、ムーディーズがそれをイタリアに行えば、イタリアはこの境界を下回ることになります。境界が持つ意味は大きく、境界を下回る格付けを持つ「ジャンク債」を投資対象としない投資家は世界に多く存在します。例えば、30年以上の実績を持つFTSE世界国債インデックスは、グローバルな機関投資家の95% が何らかの形で参照しているとされますが、そのインデックスの中にはジャンク級の国債市場は含まれません。同指数に占めるイタリア国債の比率は現在約8% ですが、ジャンク債になれば、指数から除外されることとなります。

ただ正確には、指数から外されるのは、ムーディーズ以外の大手格付け会社であるスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)やフィッチなどもジャンク級にまで格下げしたときになります。後者の2社も、現在はイタリアを境界を2段階上回る水準に格付けしています。一方、両社はまだ格付けの見直しについては正式な見解を示してはいません。また、事例はあると書きましたが、ムーディーズが2段階の格付けにまで踏み込むとすれば、新政権の実際の政治運営とその財政面への過度な悪影響を確認した上で、2回に分けて格下げする可能性の方が高いと思われます。


今は中央銀行がイタリア国債を買い支えているが・・・

ただイタリア国債にとっては、新政権以外にも重大な問題が待ち構えています。ECBが量的緩和として行ってきた資産購入プログラム(APP)の終了です。ECBは今月の理事会で、APPを9月以降縮小したうえで、年内に終了することを決定しました。しかしこのAPPは、今やイタリア国債にとって非常に重要な買い手となっているのです。APPの終了はイタリア国債の金利上昇(価格低下)につながる可能性が高いと見られ、多少の金利上昇でもGDPの130%以上もの財政赤字を抱えるイタリアには大きな経済的打撃となります。財務状況の悪化は当然、格下げのリスクを高めます。そして、万が一完全なジャンク債(4大格付け会社全てからジャンク級の格付け付与)となれば、イタリア国債はECBの適格担保としても使われなくなります。


ジャンク債との境界手前が、一番売り圧力の高まるとき

現時点では、イタリア国債がジャンク債になる可能性が高いとはまだ言いきれません。しかし、「ジャンク成り」の影響が致命的に大きいだけに、市場はこれからもイタリアからの悪いニュースには敏感に反応しそうです。では、もしイタリア国債を持っていたら、投資家はどうすればいいのでしょうか? 投資方針などによって答えは異なってくると思いますが、ブラジル国債の例などは一つの参考になるかもしれません。

日本の個人投資家にも人気のあったブラジル国債も、数年前にジャンク債へと転落しました。まず2015年9月にS&Pから外貨通貨建てのものをジャンク級に格下げされたのを皮切りに、翌年2月25日までには大手3社すべてからジャンク債と格付けされました。しかしブラジル国債への売り圧力が最も強かったのは格下げ前までであり、実際にジャンク債になった後は、通貨レアルもブラジル国債価格も徐々に回復基調となりました(今、また足元で価格は下げ基調にはありますが。)。ジャンクの境界を超えるかどうかの不透明な時期が、一番価格が低い可能性があることは頭に入れておいても良いと思います。


(この記事は、6月15日付のZuu online に掲載されたものの抜粋です。全文はこちらをご覧ください。)
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