先進国を中心に低金利の環境が長く続き、ここ数年多くの都市で住宅価格が大幅に上昇してきました。全体としてはまだ不動産市場は堅調に見えますが、一部のハイエンドな地域では変調の兆しが見られています。これはより大きな変動につながるシグナルなのでしょうか?
(この記事は、6月15日付のZuu online に掲載されたものの抜粋です。全文はこちらをご覧ください。)
ロンドンで住宅価格の下落止まらず
ロンドンでは住宅価格の下落が続いています。英国住宅金融大手のハリファックス によると、1-3月期には前年同期比で‐3.8%と、2010年初め以来の大きな下げ幅となりました。2017年10‐12月期も‐0.7%となっており、前年比での下げは3期連続となります。またアカデータ社 の発表でも、4月にはロンドン地区だけが英国内で住宅価格が下落し、その下げ幅は2.5%だったといいます。同社によると、英国全体では、2016年に一時見られた+9%よりは緩やかになったものの、1%の価格上昇だったと言います。
ロンドンで住宅価格が低下している最大の理由は、BREXITに備えたビジネス界の動きです。特に金融センターであるシティからの人材流出は、ロンドンの高級物件に影響を与えていると見られます。
マンハッタンでも住宅価格の下げが急速
ダグラス・エリマン社とミラー・サミュエル社によると、第1四半期のマンハッタンでの住宅取引額は前年比で25%も減少したといいます。これは2009年第2四半期以来の減少幅です。また平均売買価格も同時に低下しており、中間価格は108万ドルで前年比‐2%となり、さらに平均価格では193万ドルで同‐8.1%となりました。
マンハッタンでの価格下落の要因の一つとして、昨年末に決まった大型減税の一環で住宅ローン利子控除におけるローン総額の上限が引き下げられたことがあるとされます。また、利上げによって、住宅ローン金利が上昇していることも影響していると見られます。とはいえ、国全体で見れば住宅価格はまだ上昇しているのは英国と同様の現象です。米連邦住宅局(FHA) によると、1‐3月期には50州全てと首都ワシントンで住宅価格が前年同期比で上昇しました。
シドニーやメルボルンでの価格下落が顕著
オーストラリアでは住宅価格の下落基調が続いており、米不動産調査大手コアロジック社が発表した4月の豪住宅価格指数 は前月比で0.1%低下しました。低下は2017年10月以来7か月連続です。しかしここでも下げをけん引しているのは都市部で、地方だけを見ると まだ上昇傾向が続いています。都市部の下げは特にシドニーやメルボルンなどで顕著に見られ、4月は前月比0.4%の低下となりました。シドニーなどでの価格下落の背景には、政府による規制の強化があるとされます。
世界的に住宅価格の下げは連鎖するのか?
世界的に住宅価格の下げは連鎖するのか?
英国、米国、オーストラリアの都市部で高級物件の価格が下がっている背景は、それぞれ異なります。ただ共通点もあり、それはそれぞれの国で金利が上昇傾向にあるということです。英米はすでに利上げを進めており、2016年8月以来金利を据え置いているオーストラリアでも、次の利上げを視野にすでに銀行間の調達金利は上昇を始めています。こうした住宅価格の動きに関し、国際通貨基金(IMF )が4月に非常に興味深い分析を発表しました。世界的に住宅価格がシンクロして動く傾向が強まっているとの見方を示したのです。その背景として、世界的な低金利の中、グローバルに動く投資家の資金が世界各地の不動産市場にも流入していることを指摘しています。特に都市部でそうした傾向が強いといいます。IMFの分析が正しいとすると、今後「世界的な低金利」という環境が変わっていけば、これまで多くの国で住宅価格が上昇してきたのとは逆に、世界的にシンクロして価格は下落するリスクがあります。香港や東京などではまだ価格下落は見られていないようですが、注意が必要なのかもしれません。
(この記事は、6月15日付のZuu online に掲載されたものの抜粋です。全文はこちらをご覧ください。)
(この記事は、6月15日付のZuu online に掲載されたものの抜粋です。全文はこちらをご覧ください。)
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